【僕が家庭の平和を壊した日から43年】
ことばを探す旅
当時の私は、ことばを失っていた
父親への説明は、全てが「くちごたえ」と捉えられた
ことばを発する毎に、強く叱責された
それから、私は口を固く閉じ、ことばを発しないことに決めたのだ
私は、いまでも、怒鳴る人が苦手だ
人が口から発することばを、乱暴に扱う人にしか思えない
私自身にも喜怒哀楽の感情はあるが、「怒」に対しては特に慎重になる
起こられる人の気持ちが痛いほどわかるからだ
だから私は、人のことを怒らないと決めている
あのときに、
あの時代に、
発するべきことばを
当時の私は、発することができなかった
あのときの、心の声を胸に秘めて、これまでを生きてきた
今回、私はひとり旅をした
ことばを探す旅として
当時、心に秘めたことばを思い出すためだ
この地には、静寂という、ことばとは真逆の
世界が無数に存在していた
しかし、
ことばに対して真逆のものは、ことばをより強く引き寄せる
ことばをより強く求めるのだ
私がこの地を選んだのは、そういった理由からだ
私の想像以上に、その引き寄せは直ぐ様起こり、
私は静寂の世界にあり、当時の失ったことばに発することが出来なかったことばを、次々と発した
それは、正に、静寂の力だった
私は、発することばを感情的になりながら、認識し、噛み締めながら、記録していった
この地で、ことばを探す旅の目的を果たした
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