〖短編小説〗幸せの泉
【小児がんサバイバーの私が描く物語】2話
「幸せの泉」の湧き出す水を一口飲むと、この世のすべての病が完治すると言う。
この世のどの様な難病も、たちまちのうちに治り、再発の心配も必要ない。
「幸せの泉」がこの世のどこの場所にあるのか、誰もわかっていない。
これが世の中の常識となり、「幸せの泉」の存在が単なる夢の中の話として人々の記憶から消えかけている。
しかし、実際に「幸せの泉」があることを私は知っている。
その場所は、地図を使って探すものではなく、その景色は衛星から見つけることのできるものではない。
その、「幸せの泉」は、目で見ることはできない。
「幸せの泉」それは、見える人にしか見えず、本当に必要な状況でしか見ることができない。
「本当に必要な人」
それは、あなた自身がよくわかっているはず。
ほんの少しの欲望、ちょっとした歪んだ気持ち、少しでも曇った心では、その「幸せの泉」には、たどり着けず、その泉の水を飲むことさえできない。
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短編小説執筆に至った背景
私は10歳の夏、小児がんを発症しました。今から40年も前のことでした。当時はまだ症例が少なく、100万人に1人の発症確率だとも言われていた希少癌で、骨肉腫という病名です。
発症した場合の生存確率も極めて低かったのです。
当時の私は、なす術のない状況に、
空想することが心地よく、唯一の希望の光になっていました。
この世の中には、
「どんな難病も一瞬で治す魔法がないかな」
「癌を治すぬり薬はないかな」
「お薬だけで骨肉腫は治せないかな」
「一口飲むだけですべての難病を治す湧き水の泉はどこにあるかな」
「あればいいな」
「突然、届くといいな」
そんな空想に、自分の心を慰めていたものです。
「自分が癌になったなんて、嘘であって欲しい!」
「診断ミスであって欲しい!」
しかし、現実は厳しく、
確実に自分に向かってくるのです。
私が思うに、
がんが治るというイメージを持つこと
がんを治したいという希望を持ち続けること
などは、実際のがん治療に心理的な面で、良い効果を生み出すような感覚があります。
少なくとも、前向きな空想に入ることで、過度のストレスを緩和する働きを私は、幼少期に小児がんと闘っている時に、実体験した経験からお伝えしたい。
その効果を試すためにも、この短編小説の執筆を始めました。
この短編小説は、定期連載しますが、皆様からの感想を募集いたします。
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