見捨てる人
僕は「見捨てられた人」
助かる命と、助からない命
私は、その場面を見てしまった
「お子さんは、お子さんの病は、手遅れかもしれません」
それは、
その言葉は、僕に向けての言葉だった
この世に生まれて10年目の夏
まさか、と思った
テレビドラマで観ていた場面が
目の前で起きていた
最初は他人事のような感覚で、
しかし
すぐに目が覚めた
僕のほっぺをひっぱたき、目を覚まさせられた
自分の生きる、死ぬに関わる話が
現実の話として自覚できた時、
僕の心臓がバクバクと、
僕の身体から逃げ出そうと、暴れ始めていた
頭が強く締め付けられ、
意識を失う程に、強く歯を食い縛り
気が付くと、大人同士の話し合いは終わっていた
僕の生きるとか、死ぬとか、という
答えのない話が終わった
結局、僕は大人の話には入れて貰えなかった
僕は「疎外感」しか残らなかった
そして、その後から襲ってきた感情が「怒り」だった
僕の人生にとって、とても大事なシーンが強引に奪われ、勝手に書き換えられたような感情だった
人間が人を見捨てた時、
見捨てられた人の気持ちが
よくわかった
わずか10歳で、その経験をすることは、
滅多にはないことだと思いたい
大勢の子供たちが、この経験をしていたならば、
この世は異常な状態だ
【あなたの命は救えません】
人のことを見捨てる判断をすることは、とても辛いことだと思う
それは、大人であれば、「見捨てられた人の気持ち」なんて、容易に理解できるからだ
「もう、救えません!」
その言葉には、
厳しい現実世界と、
何でもない平和な日常の世界が、
マーブル柄のように入り交じった別世界があった
その別世界に招待された人は、超越した精神耐力を持ち合わせた人なのだと
当時の僕の感情や背景を振り返り、
改めて、大人になった私が整えた考えだ
当時、子供だった私だからこそ、その別世界に招待された
特別に、気が強いわけでもなく、
精神力を鍛えているわけでもない私が、
その特別な経験をしてきた理由は、
それを探求することが
私の人生の目的だからなのかもしれない
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