〖短編小説〗幸せの泉【小児がんサバイバーの私が描く物語】11話
「それで、幸せなのか!」
「それでも、いいのか!」
僕は、そのどこからか聞こえる声に耳をすませていた
いや、足はなくしたくない!
「そうか」
その声が最後だった
暖かい海風が頬を伝っていく
明るく眩しい陽射しが、とても心地よかった
僕のそばには、亡くなったお兄ちゃんがいた
間違いない!
そう思えると、とても安心できた
もう、大丈夫
眼下に広がる、大海原
ずっと向こうの対岸がキラキラ輝いている
僕はまたも、何かに導かれるように、
その方向に飛んでいった
次回に続く
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短編小説執筆に至った背景
私は10歳の夏、小児がんを発症しました。今から40年も前のことでした。当時はまだ症例が少なく、100万人に1人の発症確率だとも言われていた希少癌で、骨肉腫という病名です。
発症した場合の生存確率も極めて低かったのです。
当時の私は、なす術のない状況に、
空想することが心地よく、唯一の希望の光になっていました。
この世の中には、
「どんな難病も一瞬で治す魔法がないかな」
「癌を治すぬり薬はないかな」
「お薬だけで骨肉腫は治せないかな」
「一口飲むだけですべての難病を治す湧き水の泉はどこにあるかな」
「あればいいな」
「突然、届くといいな」
そんな空想に、自分の心を慰めていたものです。
「自分が癌になったなんて、嘘であって欲しい!」
「診断ミスであって欲しい!」
しかし、現実は厳しく、
確実に自分に向かってくるのです。
私が思うに、
がんが治るというイメージを持つこと
がんを治したいという希望を持ち続けること
などは、実際のがん治療に心理的な面で、良い効果を生み出すような感覚があります。
少なくとも、前向きな空想に入ることで、過度のストレスを緩和する働きを私は、幼少期に小児がんと闘っている時に、実体験した経験からお伝えしたい。
その効果を試すためにも、この短編小説の執筆を始めました。
この短編小説は、定期連載しますが、皆様からの感想を募集いたします。
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