〖短編小説〗幸せの泉【小児がんサバイバーの私が描く物語】17話

ひんやりとした空気が、

常に、僕を緊張状態に保ってくれた

あてもなく歩いた僕の身体は、知らず知らずの間に夜霧の雫で濡れていた

あたかも、その夜霧の雫で自らの全てが清められているように感じた

僕の内の嫌なところ、汚れた心、

その全てが、雫と共に流れ落ちていた

僕は真っ暗な森の中で、何かに導かれるように

見えない道をひたすら歩いた

「きっと、この先に何かが待っているに違いない」

そう、思いながら、雫が垂れる身体を勢い良く奮い立てて、先に進んだ

もう、どれだけ歩いたのだろうか

時間的な感覚はない

「もう、助からなかったのだろうから」

「時間なんていっぱいある」

そんなことを思っていると

「バタバタ」「バタバタ」

突然、僕の頭上で、何かの音がした

「あっ、あっ」

僕はとてもびっくりし、そして、とてつもない恐怖を感じた

「あーっ、はっ、はっ」

僕は、その何者かわからないものから、

必死で逃げた

走って、走って、

月夜の灯りに照らされる地面

木々の落ち葉や折れた小枝を踏みながら、

走った

走った

「あっ」

「ドスン」

僕は大樹の根っこに足を引っ掛け、倒れてしまった。

次回に続く

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
🔷短編小説執筆に至った背景

私は10歳の夏、小児がんを発症しました。今から40年も前のことでした。当時はまだ症例が少なく、100万人に1人の発症確率だとも言われていた希少癌で、骨肉腫という病名です。
発症した場合の生存確率も極めて低かったのです。
当時の私は、なす術のない状況に、
空想することが心地よく、唯一の希望の光になっていました。

🔷この世の中には、

「どんな難病も一瞬で治す魔法がないかな」

「癌を治すぬり薬はないかな」

「お薬だけで骨肉腫は治せないかな」

「一口飲むだけですべての難病を治す湧き水の泉はどこにあるかな」

「あればいいな」

「突然、届くといいな」

そんな空想に、自分の心を慰めていたものです。

「自分が癌になったなんて、嘘であって欲しい!」

「診断ミスであって欲しい!」

しかし、現実は厳しく、

確実に自分に向かってくるのです。

私が思うに、

🔷がんが治るというイメージを持つこと

🔷がんを治したいという希望を持ち続けること

などは、実際のがん治療に心理的な面で、良い効果を生み出すような感覚があります。

少なくとも、前向きな空想に入ることで、過度のストレスを緩和する働きを私は、幼少期に小児がんと闘っている時に、実体験した経験からお伝えしたい。

その効果を試すためにも、この短編小説の執筆を始めました。

🔷この短編小説は、定期連載しますが、皆様からの感想を募集いたします。

🔷毎回の投稿ページのお問い合わせフォームからご感想をお願いいたします。

♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡


ほっし校長

10歳の時、100万人に1人の確率で発症の希少ガン(骨肉腫)を発症。
主治医からの、ガン告知と右足の切断と余命の宣告。自らの経験から、ガン患者さん、特に小児ガンの子供たちの心を世界中に伝えたい。

At the age of 10, one in one million people develops a rare cancer (osteosarcoma).
Cancer notification, amputation of right leg and life expectancy from the attending physician. From my own experience, I would like to convey the hearts of cancer patients, especially children with childhood cancer, to the world.

おすすめ記事

コメントを残す