優しさに飢えた私を見られたくない
しかし
優しさが欲しい
溢れるほどの優しさが欲しい
孤独
神様は私を孤独の世界に
孤独の世界に放り込んだ
もっと優しさを知ってみたかった
10年間生きてきた
10年間の間だけで、いい
もっといろんな優しさに触れたかった
そんな私は、一粒の優しさを知り、この世を去る
今から手術室に向かう
私はベッドの上に横たわり、長くまっすぐな二階の通路を移動した
まるで、各病室のみんなに挨拶まわりをしているかのようだ
一階へのエレベーターに載ると、
執刀医助手の先生と看護婦さんの会話が、まるで初心な恋人同士の様に思わせた
「みんな、幸せになってね」
みんなに挨拶をしながら、この世での最後の映像を、
目に写る景色や人の声、物音
それらの全てを私の心身にインプットした
「私はこの想い出を大切に、天国に行きます」
「ありがとう」
手術室の入り口に着いた
シルバー色の重厚な扉が開けられ、ベッドは中に入っていった
長い廊下の先に、手術台が見えた
明るく、柔らかい光に包まれた廊下をベッドは移動し始めた
先ほどまでの胸の高鳴りは、おさまり、
とってもリラックスしてきた
そして
右手の指先から、じんわりと温かな熱が伝わってきた
軽く握った右手の掌からは、キラキラと光の粒子が飛び散っていた
私はすぐにわかった
お別れの挨拶をした皆
皆からの愛が
わたしの右手の中に、いっぱい詰まっていた
手術室内に、愛の光の粒子が拡がっていった
私は溢れるほどの優しさを貰いこの世を去った
私は幸せをいっぱい握りしめて、旅に出た
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