家庭の崩壊

家庭の崩壊はあっけなく始まる

もう、この家には居られない

ここには僕の居場所がないし、居るべきではないと自覚した

僕の心のなかでは、すでに家庭崩壊が始まっていた

しかし

崩壊し始めた廃墟を立て直そうとする人の光が僕の心に一線の光を刺した

母だった

母は僕にあるものを見せてくれた

それは数十年も使い馴染んだ車の免許証ケースだった

父親の免許証ケース

母は、一言ポツリと、

僕に重い言葉を落とした

「あんたは、なにも知らない」

「本当のことをわかっていない」

母の言葉は、尖った僕の意思を、簡単に砕き潰した

そして、

母は、そんな情けない姿の僕に、免許証ケースから取り出した、あれを見せた

僕は泣き崩れた

その涙は目から、心から、溢れだした

僕は少し前まで、

かなり尖った気持ちを行動に移していた

口ごたえや、家出までもしていた

時には、母親が作ってくれたお昼ごはんを、食べずダメにしていた

僕は、とても親不孝な子どもに成り下がってしまっていた

母から見せられたものは、

【僕が赤ん坊の頃の写真】

だった

母が僕に訴えた。

とても強い口調で、僕に言い切った

「あんたは、愛されてるのよ!」

「この写真が証拠でしょ!」

「兄弟の誰でもない、あなたの写真しか入ってないの」

僕は、これまでの辛い思いを思い返していた

僕が父親から受けた辛い思いと、免許証の写真

僕が赤ん坊の時の父親の笑顔を想像してみた

しかし、今の僕には素直に、母の想いを受け入れることができなかった。

「僕は辛いんだよ」

「あんなことも、こんなことまでも、とっても辛かったんだ」

僕は心のなかで葛藤していたが、

母には言い返さなかった。

母には辛い思いを伝えたくなかったからだ

僕の家庭は崩壊していたが、

人としての絆だけが、鎹(かすがい)となって、

何とか、家庭と言う形態を維持出来ていた

「僕は結局のところ、幸せなのかもしれない」

望まれて産まれ、そして、両親のもとで育てられている

勉強する環境を与えられ、

自由にお友達と遊ぶことも許されている

ふと、僕の耳元で聞こえてくる声が

とても懐かしく感じる

どこから発せられている言葉なのかはわからないが、

とても幸せを感じる

怒鳴られているのだが、不思議と幸せ感を感じる

【何を贅沢を言ってるんだ!】

誰が叫んでいるのだろうか?

ただ、

その声と心には、僕に対する愛を感じた

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ほっし校長

10歳の時、100万人に1人の確率で発症の希少ガン(骨肉腫)を発症。
主治医からの、ガン告知と右足の切断と余命の宣告。自らの経験から、ガン患者さん、特に小児ガンの子供たちの心を世界中に伝えたい。

At the age of 10, one in one million people develops a rare cancer (osteosarcoma).
Cancer notification, amputation of right leg and life expectancy from the attending physician. From my own experience, I would like to convey the hearts of cancer patients, especially children with childhood cancer, to the world.

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