家出の決意

「仕方なかったんだ」

僕は決断が早かった

それはいつも、突発的にしていると見られるほどに、早かった

あのときは、仕方がなかった

家出の決意をしなくてはいけなかった

僕は我慢できなかったんだ

ここは、僕のいる場所じゃない

そう、思ってしまった

庭に遊びにくる野鳥は、いつも通りのさえずりを聞かせてくれた

いつもと変わらない日だった

僕以外、周りはいつもの日常だった

僕は机の引き出しに持ってはいけないものを持っていた

最上段の引き出しの中には、「今を変えるためのもの」

しかし、

僕が進もうとしていた路は、「誤りの路」だった

もし、当時の僕がその路を選択し、実行していたなら

僕はもう、この世にはいないだろう

罪を犯していたら、この世には、もういないだろう

僕は待っていた

その実行を画策していた

だが、それは実行されず、直前で封印された

僕は「決意」を実行した

飛び出した

広い世界へ

自由の世界へ

何も決めずに、飛び出した

夜の9時くらいだった

辺りは暗く、静まり、家の明かりも疎らだった

どのくらい歩いたのか覚えていないが、気がついたら、近所の工事現場のブロック塀に座っていた

家の周りをぐるぐると歩き回っていた

そのブロック塀の壁にもたれて、夜空を見上げると、オリオン座が見えた

「ねぇ、僕はどこに行ったらいいの?」

「もう、家には帰りたくない」

夜空を見上げたまんま、目を閉じて考えをめぐらせてみたりして、

「家を出て、何時間くらい経ったかな」

「僕のことを探してるのかな」

少し未練がましいことを考えていた

こんな深夜でも、時折車が通り抜ける音が聞こえた

その車のエンジン音がしただけで、少しびびって

自らの身体が見られないように、深く沈んだ姿勢を保った

居心地の悪いこの場所を後にした

家から離れる方角の路を歩いた

トボトボ

トボトボ と、

家からどんどん離れて歩いていった

僕にとって始めての、家出初日のことだった

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ほっし校長

10歳の時、100万人に1人の確率で発症の希少ガン(骨肉腫)を発症。
主治医からの、ガン告知と右足の切断と余命の宣告。自らの経験から、ガン患者さん、特に小児ガンの子供たちの心を世界中に伝えたい。

At the age of 10, one in one million people develops a rare cancer (osteosarcoma).
Cancer notification, amputation of right leg and life expectancy from the attending physician. From my own experience, I would like to convey the hearts of cancer patients, especially children with childhood cancer, to the world.

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