逃れられない試練
僕は、この世で逃れられない試練に、わずか10歳で向かった。
それは、
とても空虚で、
とても静かな、
特別な空間にいるような感じだった。
僕の周りは薄く透明なベールに覆われ、
外の世界の声は聞こえるが、
あまり、風を感じなかった。
どことなく、
暖かく生温い空気の塊が肌に当たるのを感じた。
僕は、体が軽くなったような感覚を覚えている。
この頃になると、
僕のところには、
僕が嫌な気持ちになるような言葉は届かなくなったが、
少し前には、
僕の精神がまともに保てなくなるような言葉が多く聞こえたように思う。
少し前のこと、
僕の父親が僕の手相に、ある特徴を見つけた。
僕は手相についての知識があるわけでもなかったが、僕の手相に現れた特徴に、ショックを受けた。
「生命線が切れている」
このときのことは、今でも鮮明に覚えている。
ショックだった。
僕は、自分の未来がなくなるということを、目で見えてしまったことに、ショックを受けたのだ。
「まだ来ない、未来のことは、神様にしかわからないのじゃないの?」
こんなに、あっけなく、決まってしまうものなの?
僕は、簡単に確認ができるほどに、僕の未来が決まってきている事に失望した。
余命宣告を受けた当日
まだ10歳の私にとっては「死」は、この世で一番怖い事だった
自分自身に起きている事実
重く息苦しい
どんな手段を取ったとしても決して逃れられないこと
結局この現実を受け止めることができなかった
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「現実逃避」ということばを知る、ずっと前に、
僕は現実逃避した。
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生き抜く力【ガンと闘う10歳の僕に起きた奇跡】|ほっし校長|note
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