僕が家庭の平和を壊した日から43年目の夏
【運命と定め】
この世が突然ひっくり返ってくれないか
後にも先にも、僕がこんなことを本気で願ったことはなかった。
「お子さんは、癌の一種を発症しています」
「非常に珍しい癌の種類で、症例がほとんどありません」
「どれだけ生きることができるかも」
「手術事例も少なく、なんとも言えません」
そんなことって、あるのか?
この僕が?
何でなんだ?
しかし、しばらくしてから、やはりこれが現実なのだと、
思い知らされた
僕は死んでしまうんだ
間もなくこの世を去る
みんなと別れて、ひとり
死んでしまう
今の自分であれば、普通に受け止めることが出来るが、
僅か10歳の子供でも、
「運命とか定め」を感じるのだという感覚は一般的にはないことだと思う。
この世に、僅か10年しか生きていないにも関わらず、
自らの身に起きることを、運命だと理解出来る
ずいぶん成熟した子供だと、我ながら感心した
きっと、今の自分のメンタルでは耐えきることは、到底出来ないだろう
そこには、天から大きな力を与えられていたのかもしれない
「運命は、簡単に変えることは出来ない」
そんなことは、感覚的にも理解できていた
だけど、
「この世が突然ひっくり返ってくれないか」
そう思いたかった
唯一、そう考えているときだけ、気持ちを辛い領域から逃がすことが出来たからだ
ほんの一瞬でも、逃げたかった
もう、耐えられないと本気で思った
僕は一生の内で経験する、辛さの最大瞬間風速を僅か10歳で経験してしまった
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